人間の目が捉えられる明るさの範囲に比べて、通常の写真やビデオ映像、フィルム映像の表現できる明るさの範囲は狭くなっています。そのため、テーマとする被写体が黒っぽい場合、うまく撮るにはちょっとした知識とテクニックが必要です。例で説明しましょう。
上の画像はiPhone 6S で撮影したものですが、黒猫の表情がよくわかりませんよね。床が暗い色で、すぐ右に掃き出し窓があり、猫の背後から明るい陽光が差し込んでいます。つまり逆光です。この条件下で猫の顔をよく描き出すには、iPhoneのカメラアプリで撮影する場合で言うと、シャッターを切る前に猫の体に指をタッチします。すると、黄色い枠が現れます。これを一般にROI(region of interest)と言います。カメラアプリは指をタッチして設定したROIにフォーカスを合わせるとともに、そこが訂正な露出になるように露出を補正します。そうして撮影したのが次の写真です。
今度は黒猫の表情がよくわかります。しかし、右側のカーテンが白飛びしてしまいました。残念!
こうした問題は、最近の写真・映像に関する技術の進歩でかなり改善され始めました。みなさんはHDRという言葉を聞いたり目にしたことはありませんか?HDRとは、High Dynamic Range の略で、ダイナミックレンジ、つまり一番暗い部分から一番明るい部分までの幅を大きく表現できる技術です。ただし、HDRで撮影・記録された画像・映像を見るには、それを表示するデジタルデバイス(ディスプレイ装置、スマホ画面、テレビ、映写装置など)がHDRの表現能力を備えていることが必要です。最近発売されたデバイスでは徐々に対応が進みつつありますが、そうでない従来の表示装置を通してHDRの画像・映像を見る場合は、その豊かな表現力をすべて味わうことができません。
ただし、撮影記録した映像は、編集過程で暗部のつぶれや白飛びになっている部分に隠されているディテールをある程度は復活させることできます。
画像1のハイライトを下げ、シャドウを持ち上げたのが上の画像3です。このように、後処理である程度は補正できるのですが、上の画像の例がそうであるように、HDRでない場合はこれが限界です。
HDRでは豊かな情報を保存できるのですが、扱う人間の側がその原理を理解していないと、そのよさを引き出すことができません。そこで、まずはHDRでなくとも、黒潰れや白飛びがないように、撮影時に工夫することを心がけましょう。
プロの現場では光をコントロールすることに神経を使います。光によってイメージを表現するのです。どこからどこに向かってライトを当てるか、どこから来る光を遮るか。直射光に拡散光。反射光。あえて暗くする。などなど。
上の画像の例で言えば、カメラの下に白いレフ板を置き、猫の顔に反射光が当たるようにします。そうれば、猫の顔周りの毛にタッチがつきます。撮影時には自動露出よりも露出を1〜2段下げ、背後の白カーテンが白飛びしないように調整します。
現場にレフ板がなくとも、この黒猫のように小さな被写体であれば、ただのコピー用紙で代用できます。
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